EAEU首脳、域外との物流改善の重要性指摘

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス)

調査部欧州課

2024年05月14日

ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギスが加盟するユーラシア経済連合(EAEU)の首脳レベル会合の最高ユーラシア経済評議会が5月8日にモスクワで開催された。会合では各国首脳から物流環境整備を通じたEAEUのコネクティビティー(接続性)向上について言及があった。

最高評議会には、ロシアとの関係悪化が指摘されるアルメニアのニコル・パシニャン首相を含む加盟各国首脳とEAEU執行機関のユーラシア経済委員会(EEC)のバクィトジャン・サギンタエフ専務理事が出席した。最高評議会では、モンゴルとの暫定貿易協定の締結に関する交渉の開始を決定した。特定品目の関税の撤廃や軽減を相互に行うのが狙い。その他、既に自由貿易協定(FTA)を締結しているベトナムとの商品の認証や原産地に関する情報の電子的交換に関する議定書案などを承認した。

オブザーバー国も含めた拡大会合も同日行われ、キューバのミゲル・ディアス・カネル・ベルムデス大統領、ウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領のほか、独立国家共同体(CIS)の事務総長が出席した。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は同会合の冒頭、加盟国間の物流が急激に拡大していることを指摘した。ロシアからカスピ海周辺諸国を通り、イラン、インドを結ぶ南北国際輸送路整備のため、共通した輸送システムの創設に向けた加盟国による取り組みを最近の成果の1つに挙げた。

アルメニアのパシニャン首相は、エネルギー資源や電力分野での共通市場の早急な創設を求めた。同国が提唱する「平和の交差点」事業(注)にも触れ、国家の主権と管轄、平等と互恵性の完全な尊重に基づき、物流環境を整備する必要性を主張した。

カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領は同国内で現在取り組んでいる鉄道の改修や新設、国境道路検問所の近代化を通じたEAEU域内の輸送機能や接続性の向上への貢献をアピールした。キルギスのサディル・ジャパロフ大統領はEAEUと中国の「一帯一路」構想の連結の重要性を訴え、「中国-キルギス-ウズベキスタン」鉄道建設に向けて作業が進んでいることや、中国との間で国境検問所の新設、既存の検問所の処理能力拡大について合意したことに言及した。

2024年のEAEU議長国はアルメニアだが、今回の開催場所はモスクワとなった。EECのサギンタエフ専務理事は、次回の最高評議会もロシアのサンクトペテルブルクで12月に開催することを明らかにした(タス通信5月9日)。

(注)2023年10月にパシニャン首相が提唱した構想。同国を中心にアゼルバイジャン、トルコを含む周辺諸国が、各国の主権や管轄の下で輸送インフラやパイプライン、電力網などの整備・運営を行うことを通じて、アルメニアを国際物流や交流のハブとする。

(浅元薫哉)

(ロシア、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギス)

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